女の子の人生、きいてみよう #01 後編

作家 川上 未映子

本書は、2019年4月15日に行われたウンナナクールが主催する、作家・川上未映子さんとアートディレクター千原徹也さんのトークイベントを編集し、収録したものです。

川上さんは、「女の子、登場。」というウンナナクールのステートメントをはじめ、伊藤万理華さんの「わたし、いい度胸してる」や、のんさんの「わたしは、わたしの夢をみる」などの年間テーマも書いていただいています。約50人の女性を前に、女の子が自分自身のからだとこころで生きていくことを強く肯定し、応援してくれた川上さんの言葉をお届けいたします。

このキャスティングにしてよかった

川上
今回ののんさんの写真も前回に引き続き、フォトグラファーの瀧本幹也さんがお撮りになったんですよね。
千原
そうですね。今、世の中の広告のほとんどはデジタルカメラを使用しているのですが、今回はフィルムで撮っています。デジタルカメラは撮影しながらモニターに映る写真を見ながら進めます。でもフィルムだと、どんな写真が撮れているのかその場では誰も確認できない。フィルムの撮影だと撮っておく確認用のポラも「撮らなくてもいいよね?」と瀧本さんから提案があった。
いいものを撮るから任せてほしいと。
川上
完成形のイメージが瀧本さん自身におありなんですね。
千原
事前の打ち合わせで、僕が考えていることや、ウンナナクールさんの想い、川上さんの文章を含めて、瀧本さんは理解してくれていたということですね。
川上
すごい完成度。
千原
一般的な広告の撮影現場ではモニターに撮った写真が出て、クライアントさんたちが、シャッター音が鳴ると同時に「かわいい、かわいい」とあらゆるバージョンの「かわいい」が現場では聴こえてくる。でも、今回の瀧本さんはフィルムなのでモニターには何も映らず、現場にはシャッター音だけが響いていました。のんさんに「そこに座って」とか「ちょっと窓の外を見て」とか。それだけを静かに伝えて、みんなは静かにその様子を見守っている。1カット20枚くらいしか撮ってないんちゃうかな。
川上
この人を、この光、このタイミングで、ということが頭の中にあって、この完成度の写真が出てくる。
千原
今回はライカのアンティークカメラで撮っているねんけど、伊藤万理華ちゃんを撮った前作はデジタル一眼レフで撮影してて。それぞれ撮りたい雰囲気に合わせて変わっています。今回はいわゆるデジタルなものじゃなく、雰囲気を映し出すアンティークのライカで自然に撮っていった方がいい、と。
川上
のんさんの意志の強さが現れていますよね。今季のウンナナのコンセプトを、繊細に、力強く表現してくださって。ウンナナクールを好きでいてくれるみなさんに最高のかたちで発信できたことが本当にうれしいです。

参加者の声

40代女性(派遣社員)

「人それぞれのフェミニズムがあっていいのだ!」というのが、とても印象的で、そして、ホッとしました。

30代女性(ピアノ講師)

質疑応答の内容がとてもよかったです。いろいろな女性の意見が聞けて、川上さんのお応えも素晴らしく、感激しました。

柔軟であることの大切さを感じました。常に変わっていく時代の中にいる自分を見つめ、周りの人たちと一緒に生きていく偶然を楽しみたいと思います。

20代女性(会社員)

川上さんの女性に対する熱いメッセージに感動して、涙まで出ました。 社会に対する問題意識と、その表現のしかたがとても素敵で、お言葉が心に響きました。

女の子、登場」には、社会が抱えている問題が凝縮されている気がしています。私が幼い頃から抱えていた違和感を、こんなにぴったり言葉で表してくれている、ことに感激しました。消費されることに甘んじている、誰かに守られようとしている、愛されることを待っているだけの女性像を塗り替えるためには、そのことの自覚と主体性、そしてその拡大が必要だと思いました。

20代女性(衣料品販売員)

川上さんと千原さんの関西弁での掛け合いがおもしろく、予想以上に、笑わせていただき、また、楽しませていただきました。

川上さんがフェミニズムについて語ったことに非常に共感しました。男性、女性という性別上の属性だけで他人を判断したり、決めつけたりするのではなく、対峙するその人自身の、個々の考えや歴史を見てあげること、尊重すること。みんなにとって、自分が自分であれる世界を目指すこと。

20代女性(販売員)

有名なクリエイターがすごく身近に感じるトークイベントで、すごく良い時間を過ごす事ができた。特にまだ発展途上(ご自身にとっての正解を模索する)な発言にすごく共感し、うれしい気持ちになった。

今まで自分が女性ということで憤りや怒りを感じることが一切無かったので(自分は男性の様に、鈍感なのかなぁ、とも感じた)、川上さんや質疑応答での参加者の声はすごく衝撃だった。途中怖い印象も受けた。〝女の子〟ということを意識してるからこそ、街からのメッセージや男性からの一言にすごく感じるものがあるのかなぁ、とも思った。このトークイベントを通して、女の子の人生を応援することと併せ、男の子の人生も応援したいし、互いに主張し譲歩し合うのではなく、互いが解けて境がなくなっていくような、そういう世界になったら素敵だなぁと思った。

とにかく色々なことを考えてしまう、考えずにはいられない素晴らしいイベントでした!!!
ありがとうございました。

20代女性(販売員)

参加者からの質問のなかで、「媚びてしまう自分」や「強い気持ちを持ったまま生きることは難しい」という内容がでていましたが、それに対し川上さんが、「そういう自分でいいんだよ」と肯定してくださっていたのが印象的でした。女の子の人生に、これが正解!という答えがないからこそ、皆で考えあう時間がとても心地よかったです。

普段、自分のことを【おんなのこ】と強く意識したことはなかったのですが、川上さんのマニュフェストを通じた想いや川上さんの生きていく中での想いを聞くことができ、年齢を重ねていく自分に自信を持って、もっと自分を大切にしていこうと思いました。「全員が無理せずリラックスして生きることができる世の中になるとよい」という川上さんの言葉が、最後、感慨深かったです。

トークしてくださる方と参加者の「距離」(実際の距離もそうですが、質問などを通じたコミュニケーションの距離)の近さが素晴らしいイベントだと思いました。参加者の人数も少数に制限されており、特別感があってとても良かったです。

20代女性(販売員)

川上さんや千原さんが考えていることを人伝てではなく、直接聞けて心に残りました。

女という性別に生まれて、女の子らしくとか女らしくとか女性らしくとかたくさんの言葉や見えない時計に苦しめられることはたくさんありますが、女の子で生まれてよかったと思える言葉をたくさん聞けて純粋によかったと思いました。明日からも女の子として、人として頑張りたいと思いました。

20代女性(販売員)

ボケ、ツッコミの笑いもありおもしろく、最後の質疑応答ではいろいろな視点・考えの意見が聞け、興味深かったです。フェミニズムが増えてきた中で自分自身とそのギャップについての質問には共感が持てたし、それに対しての川上さんの答えを聞くことができて本当によかったと思います。

女の子を応援するというのは、ウンナナクールの下着でより勇気や自信を着けるということなのかな?
と思いました。自分を想って自分の好きな下着を選ぶのももちろんだし、誰かを想って選ぶのも自分のためだな、素敵だなと今回のイベントを通して改めて思いました。

プロフィール

1976年8月29日、大阪府生まれ。 2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』が第137回芥川賞候補に。同年、第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。『早稲田文学増刊 女性号』では責任編集を務めた。最新刊は短編集『ウィステリアと三人の女たち』、7月に長編『夏物語』が刊行予定。

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