女の子の人生、きいてみよう #02 後編

「自分の人生は自分で盛り上げる、という生き方」

女優・タレント MEGUMI

「立派に遊んでいる」

MEGUMIさんが千原さんをそう表現しました。でもその言葉は、千原さんだけでなく二人に共通する生き方のように見えました。

───「怖い想いをした方が人生は幸せになる」
タレントの枠を超え、女優、ラジオパーソナリティ、コスメブランド、飲食店経営、フェスの主催…、「好きなこと」を形にしていくMEGUMIさん。待っているだけじゃ、日々の感動はやってこない。仕事もプライベートも「自分ごと」として、向かっていく───二人は、自分で自分の人生を盛り上げることがとても上手なのです。

「立派に遊ぶ」というのは、ただただ楽しく遊んでいるだけではなく、しっかりとリスクをとりながら好きなことに没頭しているということ。身の回りにある、ほんのささやかなリスクを選択し行動するだけで、目に映る景色はその色合いを鮮やかに変えてくれるかもしれません。

やるか、やらないか

千原
サザンオールスターズが好きすぎて、昨年のサザン40周年を記念して『勝手にサザンDAY』というフェスをやったんですね。頼まれてもいないのに(笑)。そのフェスでMEGUMIさんには総合司会を務めていただいて。
MEGUMI
本当にすばらしいイベントでした。
千原
代々木公園に4000人集まったんです。あのイベントも、「僕はこういうことがしたい」と立ち上げ、みんなの力をもらって形にした。一番は「みんなで感動したい」という思いでした。
MEGUMI
そこに集まったお客さんも出演者もみんながサザンのことを愛していて、肩組んで泣きながら大合唱していた。改めてサザンオールスターズってすごいアーティストなんだなって。そして、いままさに自分が主催するフェスの準備をしているからすごく実感してますが、イベントを主催するって大変だし、面倒だし、ドキドキする。でも、誰よりも主催者が感動するんですよね。
千原
そうなんですよ。数ヵ月間かけてイベントの準備をするのですが。その間にクラウドファンディングでみなさんから支援を募ったんですね。キャンプファイヤーというクラウドファンディングの会社の人に『勝手にサザンDAY』の話をすると、「千原さん、その企画ならすぐに支援金集まりますよ。サザンだし、出演者も豪華だし。2000万円くらい1日で集まるんじゃないですか」って言われて。 「じゃあ、やります!」と言って蓋を開けてみると初日の支援金がたったの3000円。
MEGUMI
怖い!(笑)
千原
その瞬間、「…終わった」と思いました。しかもキャンプファイヤーの人が言っていたのは「こういうのは初日が勝負ですから」って(笑)。
もう途中は投げ出したくなるくらい辛くて。とある仲良しのサザンファンの方に相談したんですね。「どうすればファンの気持ちが掴めるのかなぁ?」って。すると「オレは千原さんがガチのサザンファンだということを知っているけど、世の中の人は誰も知らない。いきなり出てきて、金を払えと言っても難しいよね。千原さんの想いがどれだけ強いのかを分かってもらう必要がある。そのためにもまずはブログをやった方がいいよ」って。そこからブログをはじめて、茅ケ崎にあるサザンファンが集まる居酒屋まで行ってチラシを配ったりもしました。
毎日、起きたら支援額が増えているか心配で。でも何万円かずつでも増えているんですよ。その何万円かで涙があふれてくる。最終的には目標だった1,000万円が集まりました。
MEGUMI
すごいよ。言葉でちゃんと想いを伝えてきたからだ。それって仕事じゃないわけじゃん。思いついたことだもんね。そこが偉いと思うんだ。仕事は利益があるけど、千原さんの場合はそうじゃなかったりする。自分で自分の人生を盛り上げている人だよね。きっと泣きながら遊んでいる人だと思う。ドキドキしながら、足りないお金を集めて、でも「この景色を見たい」ということでやっている。本当に立派───立派に遊んでいる。
もうね、人間っていうのは「やるか、やらないか」なんだよ。しかもやらない人のほうがなぜそんなにも多いのか!と。そうこうしているうちに40代、50代になって、どんどん腰が重くなり、「また、タイミング合った時で」とか何かしらの理由をつけて手を伸ばさなくなっていく。私は、それを絶対に避けたい。誰も自分の人生を盛り上げてくれないなら、自分で自分を盛り上げていくしかない。
千原
面倒くさいことをやっていると、それを助けてくれる人が出てきてくれるんですよね。
MEGUMI
そう! 「また面倒なことやってるなぁ」って手を差し伸べてくれるんですよね。

チャレンジは人生を豊かにする

怖いことをたくさんやった方が幸せになる。

千原
「明日からやろう」はなかなかできない。
MEGUMI
思うことと、実際に「やる」ということは違うよね。
千原
こういうトークショーを聴いている時は「明日からやってみようかな」って思うんですよね。でも、家に帰ってお風呂に入ると忘れちゃう(笑)。リラックスしちゃって「もういいかな」って。 だからね、お風呂に入っちゃダメなんですよ。
MEGUMI
「お風呂に入る前にやらなきゃ」だ(笑)。
千原
そう、行動してからお風呂に入った方がいい。僕はまず「やる」と言っておきます。宣言しておかないと、いずれ逃げてしまうし、なんとなく何も起こらない。でも「やる」と言葉にするだけで、第一歩を踏み出したことになる。
MEGUMI
「絶対にやる」と言えば形になる。それは、私が37年生きてきて思いますね。誰も私が映画に出るなんて思っていなかった───私さえ思っていなかったし。金沢に店を出すことも思っていなかった。でも「やる」と言ったものだから、やらざるを得ない。それを見た周りの人たちが一人助け、二人助け…と。次第に現実になっていく。
千原
言ってしまった方がいいんですよね。だから「〝やる〟って言いなよ」と思う時がある。なかなかこの人「やる」って言わないなぁって。
MEGUMI
そうなんだよね。大人って頑固だし「でもね、でもね」って言って決断を先延ばしにする。やっぱり怖いんだよ。
 
でもね、私は怖いことをたくさんやった方が幸せになると思ってるんだ。「こんなことやっちゃったら私終わりだ!」ってビビることをたくさんした方がいい。その方が自分も必死になるし、その分、形になっていく。そのプロセスがあるから感動も大きくなる。怖いことを片っ端からやっていった方がいいと私は思います。
千原
僕も『勝手にサザンDAY』の準備をしている時は精神状態がギリギリだったんですね。それが終わって抜け殻みたいになってしまった。終わって打ち上げして、感動を分かち合ってみんなで泣いて、撤収作業をする。たまたま次の日、朝一でCDジャケットの仕事があって。「あ、またこれやるのか…」って。自分発信で何かをやって感動を得た後の、いつものクライアントワークに少し落ち込んだ自分がいました。もちろん、クライアントさんのことも好きだし、そのアーティストのこともリスペクトしています。それでも、そういう精神状態に陥ってしまった。
MEGUMI
昨日までの感動に対して、受け身という仕事の姿勢がしっくりこないんだよね。「また、いつもと同じ日々なんだ」という感覚だよね。前の千原さんより進化しちゃったんだよ。
千原
だから、普段の仕事を「おもしろい」と思うためには、新しいことを発信し続けなければいけない。
MEGUMI
私も金沢でお店を出すことが決まった時、まわりからは「ビジネスマンだね」とか皮肉っぽく言われたりもしました。でも大変なことが多かった。「やるって言ったけど、物件を借りることができなかったらどうなるんだろう?」とか。不安で眠れない夜を過ごしたけど、それって大事なことで。さっきの千原さんの話じゃないけれど、人生を盛り上げていくための決断って本当に怖かったんですよ。

お店があるのは、京都でいう祇園のような場所で、ひがし茶屋街という国の指定文化地域。その物件が気になって、最初は軽い気持ちで話をしに行ったのですが、不動産屋さんが貸してくれないんですよ。地元の方々が首を縦に振らないと許可が下りない。
公民館に呼ばれて、挨拶に行ったら激怒されました。「お前は何だ!」みたいな感じで。私1人と8人のおじいさんという構図で、8人が全員怒っているんですよ。要は「私がやりたいことの熱が足りない」と。「次の時は、書類に落とし込んでわかりやすく書いてこい」と日にち指定までされて。こちらのスケジュールなんて全く関係ない。
それを1年半続けました。2ヵ月に一度、1人で金沢へ行き、8人のおじいさんに怒られて帰ってくる。「次こそは」と臨むと、また怒られて帰って来るの繰り返し。金沢からの新幹線の中で弁当を食べていると涙があふれてきて。35歳にもなって知らない人から本気で怒られることなんてないじゃないですか。そういうことがあったからこそ、今のお店を愛おしく思えてます。

「泣きながらごはんを食べる」という体験は、人生を豊かにしてくれるんだっていうことはここ10年で感じたことですね。

質疑応答

(参加者)私もやりたいことはたくさんあるのですが、すぐに行動に起こせるものと、そうでないものがあります。その違いって何なのでしょう?

MEGUMI
それは思いの強さだと思います。私、ラジオ番組を15年やっていて。恵まれたことに一部上場企業の社長さんや人間国宝の方にインタビューする機会が多かったんですね。彼らは口を揃えて「やりたいことを書く」って言うんです。

一人きりになって書いていると、見えてくることがある。要は、人って日常に飲まれてしまい、やりたいことが薄くなってしまっているんですね。でも、そういう人たちは自分に向き合う時間をたっぷり確保している。書いて、書いて、書いて、「自分の優先順位はこれだ」ということを丁寧にやっているんですね。だから、自分と向き合うことは大事だと思います。

(参加者)グラフィックデザインをしたいと思い、昨年上京してきました。千原さんの作るようなデザインをやりたいと思うのですが、どうすればいいのでしょうか?

千原
一口に〝グラフィックデザイン〟と言っても、幅が広いですよね。今では広告を作っていますが、上京した当初は僕も携帯電話会社の説明書をつくっていたりしましたからね。世の中にデザインがないものなんてないですから。だからその分だけ、デザイン会社もたくさんある。
MEGUMI
どうやって個性を出していけばいいんでしょうね?
千原
僕も当時、自分の〝個性〟が分からなくて。マス広告の会社、カルチャー系の会社、ファッション系の会社───デザイン会社を3社移り変わって、最終的に「ファッションが楽しい!」と気付くことができた。〝自分らしいデザイン〟をつくるためには、まず自分がどのデザインが合うか見つけることですね。まず多分、自分がどのデザインが合うのか見つける作業からはじめてみればいいと思います。

(参加者)チャンスが来た時に怖くなってしまうのですが、どうすればいいでしょうか?

MEGUMI
チャンスは掴まなきゃいけないですよね。それに向けて日々鍛錬───私だったら映画を観るとか、舞台に立ってお芝居をする、とか。チャンスが来るか来ないかは分からないけれど、チャンスに向けて日々準備していると「いつでも来い」という気持ちになれるんですよ。

でも、それをやっていないとチャンス来た時に逃してしまう。特に芸能界はそういうことが多いかもしれませんが。自分がやりたいことについて調べたり、触れたりすることが1分でも多い人の方がチャンスをゲットできる確率は高いと思います。
千原
日々の鍛錬というのは本当に大事。でも、チャンスって怖いものなんです。例えば、僕が大好きな阪神タイガースでも、満塁で打順が回ってくるとみんな緊張してガクガクになるんですよ。「ここで打てば勝てる」という大チャンスなのに。プロの野球選手でもチャンスは怖いものなんです。でも、毎日準備をしっかりとやっているとモノにできる可能性は高まってくる。意外と、チャンスはゴロゴロ転がっていて。ただ、それに気付いていないことが多い。後になって「あれってチャンスだったんだ」と気付くんですよね。
MEGUMI
「繋がっていたんだ」ということは本当にありますね。
千原
「このチャンスをゲットしていたから今の自分があるんだ」ということは人生において結構あります。でも、意外と転がっているのに拾えていないということもある。
MEGUMI
反対にチャンスだと思っていても、咲かないものもあるんだよね。でも、その時に咲かなかったとしても、後になって花開くものもあったりするからね。それが人生のおもしろいところだよね。だから、続けるっていうことが大事じゃないかな。

プロフィール

岡山県出身倉敷市出身。2001年デビュー。
持ち前のキャラクターを活かしテレビや雑誌などで活躍。
近年では、ドラマや映画、舞台への出演により活躍の場を広げている。
映画「アイネクライネナハトムジーク」、「くもり ときどき はれ」、「ニート・ニート・ニート」、「巫女っちゃけん。」「孤狼の血」
テレビ、TBS「新しい王様」、YTV「黒い十人の女」、フジテレビ「スカッとジャパン」など。

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