女の子の人生、きいてみよう #07 前編

手放して、旅に出る     

アーティスト KOM_I(コムアイ) 

自分で考えて、自分で選ぶ。
誰かが決めた正解に、従っているだけでは、本当の意味で“前進”しない。

「さあ、わたし」

大きく息を吸おう
世界は広がっている
知らない「どこか」がわたしを待っている
もっと遠くへ

探して、学んで、深めてゆく。
手に入れたものと、手放したもの。
みんなでそれを出し合って、共有した時間。
本当の答えに辿り着くために、たくさんの間違いを許容する。

コムアイさんのつくる「対話の場」。

そこには、自由と愛がありました。

間違った意見があった方がおもしろい

間違った意見があった方がおもしろい
コムアイ
考えたり、議論することが大事で。
思っていること、感じていることを、一人ひとりが話してみる。

「この場合だと、どうなのかな?」
「それだと、逆にこういう差別が生まれるんじゃないだろうか」

すぐに正解に辿り着くことなんてできない。
もし、それができるのなら、議論の必要はない。
誰もが間違えていい。
間違った意見があった方が、議論はおもしろくなる。

“三人寄れば文殊の知恵”じゃないけれど、人が集まることでベターな答えを導き出す。それは、豊かなこと。それこそが、民主主義。

間違いを、恐れない。
千原
でも、“間違った発言”をする勇気の出づらい社会ではあるよね。
コムアイ
じゃあ、今日はがんばって間違えよう。

そこから、この対話ははじまりました
コムアイさんと千原徹也さん、そして、女の子たち。

“社会って、数の多い方が勝つじゃない?
千原
社会って、数の多い方が勝つじゃない?
1人が懸命に「これは違う」と言っても、99人が「正解だ」と言えば、その1人は制圧されてしまう。たった1人だとしても「違う」と声を上げた時に、本当に違うのかをあらためて検証すべきだよね。
コムアイ
そこにヒントがある気がする。一つの生き物だと考えるといいのかもしれない。

全員で、一つの“わたし”のからだ。

それぞれ役割があって、99%同じ意見だとしても、残りの1%が異なる意見を指摘してくれたおかげで救われることがある。「アラート出してくれてよかった」みたいな感覚で。

下着とフェミニズム

下着とフェミニズム

誰かに決めつけられるのではなく、自分の意志で選ぶこと。

コムアイ
わたしたちは、身に着けるものを、どれくらい自分のために選んでいて、どれくらい他者の目線を気にして選んでいるか、ということにとても曖昧で。実際に明確な線を引くことはできない。でも、そこを問い直すことは重要だと思います。

そういう意味では、下着からフェミニズムを考えていくことは入り口としてはとても良い気がします。洋服も同じかもしれない。ただ、下着は自分以外だと、大事な人しか見ることがない。親密な人間関係でしか成立しづらい。

わたし、レースの下着が好きなんです。下着でしか表せない質感やセクシーさに惹かれて。でも、それは男性目線でセクシーだから好きなのかというと、そうではなかったりするんですよね。自分が自分でそれを「いい」と思っているから。
千原
難しい問題ですよね。
ウンナナクールのステートメントを書いてくれた作家の川上未映子さんと話していると学ぶことが多いんです。彼女にはピンク色に対する怒りの感情があって。手当たり次第、女性にピンクをあてがう社会に対して疑問がある。たとえば、戦隊モノでも女性はピンクだったり、電車の女性専用車両はピンク色をあしらわれていたり。“ピンク映画”ということばもまた「女=ピンク」という印象を与えていたりする。

でもね、おもしろいのは「だけど、ピンク色好きなんだよね」って川上さんは言うんです。「ピンク色のもの選んで買っちゃうんだよね」って。女性をピンク色に当てはめることは嫌なんだけど、個人的にはピンク色が好きだ、と。
コムアイ
すごくわかる。自分で選ぶ分には何だっていいんですよ。他人から「これが好きなんだろ?」と決めつけられることが、悔しかったり、許せない気持ちになる。
千原
川上さんにそのピンクの話を聴いてから、僕も意識するようになったんです。先日もとある新聞広告で、男女それぞれの主張が書かれていて、女性の部分は背景がピンクなんですよ。男性はブルー。そういうのを見ていると「この広告は男が作っているな」とか思うんですよね。
コムアイ
あたり前になっている認識を問い直すことは重要ですね。

もっと踏み込んで話をすると、たとえば女性が辛い思いをする事件が起きた時、「家に入れた側の責任もあるよね」という声が出たりする。わたしが大学生の頃は、そういう会話が日常にありました。「男の子を家に入れたら、二人きりになった時点で女の子の方も悪いんじゃない?」とか。当時は「まぁ、そうかもね」と思っていましたが、今は全く思わない。どのような状況であれ、そこに同意がなければ踏み込んだ方が悪い。

「裸だった」、「一緒にお酒を飲んだ」、「手を繋いだ」……それらは全て性行為に同意したことにはならない。これらの点は、日本では認識が変わっている途中なのだと思います。

時代と共に考え方も更新されてゆくと思うんです。「普通だと思っていたけれど、あれは差別だったね」とか。すぐに答えはないけれど、それぞれが考えて議論をすることには価値があります。

プロフィール

アーティスト。1992年生まれ、神奈川育ち。ホームパーティで勧誘を受けて加入した「水曜日のカンパネラ」のボーカルとして、国内だけでなく世界中のフェスに出演、ツアーを廻る。2021年9月に脱退。
2019年、オオルタイチと屋久島でのフィールドワークをもとに制作した音源「YAKUSHIMA TREASURE」をリリース、公演を重ねる。新しい音楽体験「YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE from 屋久島」をオンラインにて公開中(https://another.yakushimatreasure.com/)。
現在はオオルタイチと熊野に通い新作を準備中。

2020年からはOLAibiとのコラボレーションも始動。
北インドの古典音楽や能楽、アイヌの人々の音楽に大きなインスピレーションを受けながら音楽性の幅を広げている。

音楽活動の他にも、ファッションやアート、カルチャーと、幅広い分野で活動。 2020年にアートディレクターの村田実莉と、架空の広告を制作し水と地球環境の疑問を問いかけるプロジェクト「HYPE FREE WATER」が始動するなど、社会課題に取り組むプロジェクトに積極的に参加している。

KOM_I SNS
Instagram: @kom_i_jp (https://www.instagram.com/kom_i_jp/)
Twitter: @KOM_I (https://twitter.com/KOM_I)

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