女の子の人生、きいてみよう #07 後編

手放して、旅に出る     

アーティスト KOM_I(コムアイ)

自分で考えて、自分で選ぶ。
誰かが決めた正解に、従っているだけでは、本当の意味で“前進”しない。

「さあ、わたし」

大きく息を吸おう
世界は広がっている
知らない「どこか」がわたしを待っている
もっと遠くへ

探して、学んで、深めてゆく。
手に入れたものと、手放したもの。
みんなでそれを出し合って、共有した時間。
本当の答えに辿り着くために、たくさんの間違いを許容する。

コムアイさんのつくる「対話の場」。

そこには、自由と愛がありました。

自由と解放
質疑応答

“自由と解放

「自由」というテーマを強く意識していました。

(参加者) 水曜日のカンパネラが成長するにつれて、小さなステージから大きなステージへと環境が変わっていく中で、どのような心境の変化がありましたか?また、当時から今も変わらず大切にしていることはありますか?

コムアイ
来てくれた人が「もっと自由になっていいかも」と思えるようにしたいとずっと思っていました。そのためには、こちら側が先に自由になった方がいい。

ルールに見えることをあえて破ってみたり、その境界線を越えてゆく。「こんなことしていいの?」「それをしたらカッコ悪くない?」ということを積極的に自分から踏み込んでいった。

パフォーマンスをはじめた当初は、怒りの感情が大きくて。「こんなつまんねぇライブに来んなよ」と真剣に思っていたんです。ちょっとヤバい人ですよね(笑)。『ミツコ』という曲があって、「お前はきちっと落ちて来い わたしのとこまで落ちて来い」という歌詞があるんですね。それを、お客さんに向けて叫んだり。
コムアイ
慶応義塾大学に通っていたんですけど、周りはみんなエリートだったんです。「大手広告代理店にインターンに行く」という友人の声が聴こえてきて、一方わたしはというと、下北沢のライブハウスでお客さん五人の前でパフォーマンスをしている。

「どうしてこんなことをやっているんだ」という自分に対する怒りがあった。それを来てくれたお客さんにぶつけていた。ありがたいことに、それを「破壊的でおもしろい」と受け取ってもらえた。

ステージだと、怒りや悲しみなどの醜い感情が、歌や声やシャウトになることで、おいしいものに転化するんです。パフォーマンスとして昇華される。それが芸能の力だと思うんです。

怒りを吐き出していくうちに、多くの人から共感してもらって、今度は自分の中に怒りがなくなり、愛と感謝があふれていった。だから、カンパネラの後半は「母」のような気持ちで、全部を包み込むようなパフォーマンスへと変わっていきました(笑)。見てくれている人の一生の平和や安心のようなものを祈るような気持ちで歌っていた。そういう意味では、すごく変化がありました。
千原
怒りや嫉妬心などのネガティブな力は、創作意欲に結びついていますよね。たとえば、映画を観て怒りや嫉妬心が芽生えると、「もっといいものつくってやる!」と、その日のうちに企画書を書いたり。
コムアイ
結局、作っている人はやるべきことをやっているのだから、「悔しかったら自分が作って仕返ししてみろよ」ということですもんね。
千原
自分がそのステージに立って返していくしかない。怒っているだけじゃなく、それを原動力にして自分で作る。

(参加者)「普通になれないこと」が悩みです。高校では不登校になり、大学では友達ができなかったり、就活で苦しい想いをしたり。「普通じゃないことはかっこいいよ」と言われても、わたしは普通に憧れてしまいます。コムアイさんは大学生でありながら、ミュージシャンとして芸能界デビューをされ、良い意味で「普通」ではない生き方を歩んで来られたように思います。普通から外れてしまう不安などはありましたか?

コムアイ
きっとどれだけ才能があって、歌が上手いとか、ギターが上手いとかでも、その人が努力していない部分を褒められ続けると病んでしまったりすると思うんです。「そこじゃなく、こっちを褒めてほしい」とか。自分の評価と他者の評価が合致することは、運任せのようなところがあって。

今、聴かせていただいたお悩みは、自分で選んでいることではないことが原因にあるような気がするんです。「これをやっていきたい」を選択していくこと。一つじゃなくてもいい。なんとなく「これいいかも」ということをどんどんやっていく。違うと思えば、変えてもいい。自分で選択していくこと。

インターネット、街、映画館、図書館、何でもいい。向こうから来たものではなく、自分で探すこと。なかなか選択肢は目の前に現れてこない。世の中のほとんどはつまらないものばかりだから。簡単には手に入らないけれど、必ずある。それを見つけて、掘っていくこと。

働く場所や、誰と付き合うかを自分で選択する。その中で、自分の好みが形作られていったり、自分のキャラクターが見えてくる。それが圧倒的なマイノリティであったとしても、「いいよね」と言われた時にしっくりとくるようになるんじゃないかな。そんな気がします。
コムアイ
わたしは高校生の時に、父から「お前は一般的なビジネスマンにはなれない」と言われました。きっとわたしは、社会には上手に適応できなくて。でも、がんばって会社に入って、うまくレールの上に乗ってみようと思っていた。自分の感覚に蓋をしながら。父からそのことばをもらった時に、その蓋がぱーんと外れた。

父はサラリーマンを何十年も勤めていた人なので、いろんな人を見てきただろうし、説得力があって「自分は本当に勤め人には向いていないんだな」と思った。早めに諦めがついたので、父のことばに感謝しています。
千原
自分が普通ではないことを喜べるようになるといいですよね。それを自分で分析することが重要だと思います。どうして、普通じゃないことが嫌なのか。机の上にいろいろと並べてみて、AとBがあって多くの人がAを選ぶ中、なぜ自分はBを選んだのかを分析してみる。たくさんの人が同じことを言っている中、自分だけ違う考えがある。それは実は素敵なことで。今って、考えなくてもいい世の中なんですよ。人が「いいよね」と言っていることに同意していれば、考えなくて済む。

今、映画を作っているんですけど、よく「わかりやすく作ってくれ」と言われるんです。「このシーンは意味が伝わらないから、台詞をつけてくれ」とか。でも、僕は台詞を省いて観客に考えてもらって、いろんな解釈をしてもらった方がいいと思うんですよね。

本来、映画は悩むべきものだし、勉強するべきものだと思うんです。その工程を経て、よりおもしろくなっていく。自分が疑問に思えば、世の中がAだと思っても、Bの方がおもしろいと思える。「考える」ということをやっていけば、そこにビジネスチャンスがあったり、新しい自分の発見があるのだと思います。

プロフィール

アーティスト。1992年生まれ、神奈川育ち。ホームパーティで勧誘を受けて加入した「水曜日のカンパネラ」のボーカルとして、国内だけでなく世界中のフェスに出演、ツアーを廻る。2021年9月に脱退。
2019年、オオルタイチと屋久島でのフィールドワークをもとに制作した音源「YAKUSHIMA TREASURE」をリリース、公演を重ねる。新しい音楽体験「YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE from 屋久島」をオンラインにて公開中(https://another.yakushimatreasure.com/)。
現在はオオルタイチと熊野に通い新作を準備中。

2020年からはOLAibiとのコラボレーションも始動。
北インドの古典音楽や能楽、アイヌの人々の音楽に大きなインスピレーションを受けながら音楽性の幅を広げている。

音楽活動の他にも、ファッションやアート、カルチャーと、幅広い分野で活動。 2020年にアートディレクターの村田実莉と、架空の広告を制作し水と地球環境の疑問を問いかけるプロジェクト「HYPE FREE WATER」が始動するなど、社会課題に取り組むプロジェクトに積極的に参加している。

KOM_I SNS
Instagram: @kom_i_jp (https://www.instagram.com/kom_i_jp/)
Twitter: @KOM_I (https://twitter.com/KOM_I)

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