女の子の人生、きいてみよう #07 番外編

手放して、旅に出る     

アーティスト KOM_I(コムアイ)  

自分で考えて、自分で選ぶ。
誰かが決めた正解に、従っているだけでは、本当の意味で“前進”しない。

「さあ、わたし」

大きく息を吸おう
世界は広がっている
知らない「どこか」がわたしを待っている
もっと遠くへ

探して、学んで、深めてゆく。
手に入れたものと、手放したもの。
みんなでそれを出し合って、共有した時間。
本当の答えに辿り着くために、たくさんの間違いを許容する。

コムアイさんのつくる「対話の場」。

そこには、自由と愛がありました。

コムアイとの対話【番外編】

「わたしは店頭で働いた経験はありません」

コムアイさんは、そう言って席から立ち上がりました。
トークイベントを終えた後のお話です。
「思っていること、感じていることを、一人ひとりが話してみる」
冒頭でお話になったコムアイさんのことばが蘇ります。
一呼吸おいて、こう続けました。


「お店で働いている中で、日々どういうことを考え、受け取っているのか聴かせてもらえるとうれしいです」

コムアイさんとウンナナクールに勤めるスタッフの女の子たちとの対話がはじまりました。

ウンナナクールという場所が、“新しい自分と出会える場所”になることができれば

(参加者)
わたしは社会人一年目で、昨年まで大学生でした。

学生の頃から働かせてもらっていて、どこの店舗でも共通してあるのが、コンプレックスを抱えたお客様が来店することが多いということ。お店で働いているからこそ相談に乗れることがあります。

先日、「バストに自信がない」という理由で店に入ることさえできなかったお客様が来てくださいました。ベージュやブラウンの色味が好みだから、似たカラーの下着を選んでいらっしゃった。わたしは似合いそうだったのでイエローの花柄のブラジャーをおすすめしました。すると、試着しながら鏡の前で「えっ、かわいい」と驚いて、それから「ごめんなさい、スタッフさんの前なのに」と恥ずかしそうに喜んでくださったんです。

そういう人って、たくさんいるんです。ウンナナクールという場所が、“新しい自分と出会える場所”になることができれば、と考えています。洋服は、人から見られたり、職場に合った洋服を身につけないといけません。でも、下着だけは自由でいい。「いつもと違う自分に出会えるといいな」と思って、普段はお客様のサポートや提案をしています。
コムアイ
なんてすばらしい仕事なんだろう。
下着屋さんって、すごくシスターフッドなんですね。洋服を脱ぐ場所だから、心の皮を一枚はがして、普段ガードしている部分を解き放って、柔らかい部分、弱い部分を共有し合えることができる。

意外と、家族や友人など近い存在の人には、自分の弱みを見せることができなかったりしますよね。わたしもそうでした。恥ずかしかったり、怖かったり。お店で働いているからこそ、第三者の立場として相談できる。そういう想いをみなさん受け止めていらっしゃるんですね。世の中には、このような場所が必要だと思います。

下着への呪いを解きたい。

(参加者)
わたしが店頭でよく見かけるのは、お母様と中学生くらいのお嬢様の親子がはじめてのブラジャーを買いに来るケースです。

その時に、お母様からお嬢様に呪いをかけているパターンがあります。お母様は「中学生なんだから、ブラジャーつけないと」と仰るのですが、お嬢様は「友達もまだつけている人がいないから、嫌だ」と。乗り気ではないお嬢様を「早く試着してもらいなさい」と急かすお母様。

わたし自身、中学生の頃に友人同士で「胸が大きい小さい」、「ブラジャーをつけるつけない」と話し合う空間が苦痛でした。だからお嬢様の気持ちがよくわかるんです。さらに、お母様は下着を身に着けたお嬢様を見て「ちょっと太っているから似合わないね」と続けます。それらのことばは、お嬢様にとって呪いになります。

大人へと成長していく中で、下着や体型に対してコンプレックスを抱いてしまうことになるかもしれない。お母様の見えないところで、お嬢様と二人きりで話して「わたしもすごくお気持ちがわかります」と伝えて、彼女が傷つかないようにケアしてあげることが大事だと思っています。今後、お嬢様が「下着をつけたい」と思った時に、ウンナナクールが選択肢になってもらえたらいいと思って。
コムアイ
すごい。みんなそんな想いで仕事をしているんですね。「売れればいい」とかじゃないんだ。その子の気持ちや将来のことを考えて関わることができるのは、本当にすばらしいですね。
(参加者)
母親の声は影響力が大きいんです。お嬢様がレースの下着を選んだ時に「エッチだからやめなさい」と言うお母様がいて。その中で、間に入ってサポートすることもわたしたちの仕事だと思っています。

お母様に対して「仰る通りですよね」と言いながら、「ラインが出にくいですよ」という利点を説明したり、「こういう風にも使えますよ」と提案していく。一緒にお話をしながらお客様と視点を共有していくことで、お母様にも「そういう選択肢もあるんだ」と思ってもらえたりします。

コムアイ
ウンナナクールの広告は、最初から最後までずっと熱い気持ちで関わることができました。

広告は、商品を売るためであり、世の中の多くの人の目に触れることが目的です。それが人の不安を煽るようなものではあっていけないと思っていて。むしろ、エンカレッジしていかなくちゃいけない。

人の不安を煽ると、簡単に物は売れる。
でも、そういうものばかりが世の中に増えると、呪いのかかった子も増えていく。
悩みが積み重なって、コンプレックスになる。
一人ひとり、からだは違っていいし、そのままでいい。
それを下着屋さんから伝えていけることっていっぱいあるなって。
ウンナナクールは、それを自覚して形にしていることが素敵だと感じました。
その想いにずっと共感しっぱなしでした。

わたしも去年、コロナウィルスのこともあり、ぼーっとしながらゲームをしたり、寝転がって過ごしていて。最初はゆっくりと過ごせることが幸せだったんです。時間が経つ中で、心に変化がありました。自分が幸せだからごろごろしていると思っていたのに、いくらごろごろしても幸せを感じることができなくなって。

「さあ、わたし」

そういう気持ちになった。
コロナ禍の生活だけでなく、独立したり、カンパネラを脱退したり。
今の自分の気持ちと重なったんです。
自分で自分のお尻を叩いて、前に進みたい。

「さあ、わたし」というコピーが沁みた。
このコピーがちゃんと届くといいなって。

応援しています、これからも。
日々、女の子の味方になってくださり、ありがとうございます。
【編集後記】

「手放して、旅に出る」

このタイトルは、獲得したものに執着することなく、手放して前に進むコムアイさんの生き方にインスピレーションを受けました。
自分の想いに素直でいること。
ピュアな答えに到達するためなら、目の前の正解を手放して、間違いだって許容できる。

コムアイさんの判断基準、セレクトの目。
それは、効率化、合理化、最適化とは異なる軸で、
プリミティブな生身の衝動にあります。
自分が何を感じ、何を考え、何を選ぶのか。
その価値観で物事を判断する人に惹かれます。

以前、商品営業部長の村松さんに“ウンナナクール”の意味を聴いたことがあります。“ウンナナクール”はフランス語であり、日本語に翻訳すると「ちょっとカッコいい女の子」。

人によって解釈が異なるでしょう。
わたしが考える“ウンナナクール”は「哲学を持つ女の子」。
つまり、「自分にとって何が一番大事か」をわかっている女の子。

そういう意味では、コムアイさんは“ウンナナクール”に最も相応しい女の子の一人。

この記事を読んでくださった方が、それぞれの“ウンナナクール”を育て、「さあ、わたし」という気分で、まだ見たことのない世界へと進んでゆく。
その後押しになれば、と想いを込めました。

プロフィール

アーティスト。1992年生まれ、神奈川育ち。ホームパーティで勧誘を受けて加入した「水曜日のカンパネラ」のボーカルとして、国内だけでなく世界中のフェスに出演、ツアーを廻る。2021年9月に脱退。
2019年、オオルタイチと屋久島でのフィールドワークをもとに制作した音源「YAKUSHIMA TREASURE」をリリース、公演を重ねる。新しい音楽体験「YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE from 屋久島」をオンラインにて公開中(https://another.yakushimatreasure.com/)。
現在はオオルタイチと熊野に通い新作を準備中。

2020年からはOLAibiとのコラボレーションも始動。
北インドの古典音楽や能楽、アイヌの人々の音楽に大きなインスピレーションを受けながら音楽性の幅を広げている。

音楽活動の他にも、ファッションやアート、カルチャーと、幅広い分野で活動。 2020年にアートディレクターの村田実莉と、架空の広告を制作し水と地球環境の疑問を問いかけるプロジェクト「HYPE FREE WATER」が始動するなど、社会課題に取り組むプロジェクトに積極的に参加している。

KOM_I SNS
Instagram: @kom_i_jp (https://www.instagram.com/kom_i_jp/)
Twitter: @KOM_I (https://twitter.com/KOM_I)

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